弁護士による情報通信業・IT業への対応

1 IT・情報通信業の特徴

 IT・情報通信業については、プログラミングという業務の特性もあって、社員に働く時間に関して比較的自由な裁量を認めているケースが少なくないと思われます。

自由な働き方ができるということが、IT・情報通信業で働くことの魅力の一つにもなっているでしょう。

2 IT・情報通信業特有の労働問題-長時間労働

 しかし自由である反面、労働時間の管理が不十分になってしまう嫌いがあります。IT・情報通信業においては、業務の進捗管理が難しい(社員任せになってしまいかねない)という特徴もありますので、ますます労働時間の管理が難しくなってしまいます。

 また、社会がDX化に向けて動いている現状もあって、仕事量が多かったり、顧客からの緊急の要請なども多く、納期に常に追われている状態になってしまいがちです。

 さらに、当事務所の経験からも、プログラミングなどの業務に携わっている社員には、責任感が強く、成果物に強いこだわりを持っている方も少なくないと感じています。そうすると、仕事を一人で抱え込んでしまい、労働時間も長大化していくということになってしまいます。

 厚生労働省の毎月勤労統計調査(令和4年分結果確報)を見ても、情報通信業における所定外労働時間(残業時間)は、「運輸業、郵便業」に次いで2番目に長くなっています。

 

3 その結果引き起こされること-残業代・メンタルヘルス不調

(1)残業代の発生

 このような長時間労働(残業)により発生する問題として、まず、多額の残業代の発生が挙げられます。

 もちろん仕事が多すぎて残業せざるを得ないという場合もありますが、他方で、出社しても昼間は業務の密度が低く、夜になってから本格的に業務をするということが許容されてしまっており、それ故に多額の残業代が発生しているというケースもあります。

 人件費の増大は、会社の経営を圧迫しかねません。

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(2)メンタルヘルス不調

 また、仕事量が多く、いつも納期に追われ、にもかかわらず業務の進捗管理が難しいことから、社員が仕事を一人で抱え込んでしまい、その結果メンタルヘルス不調に陥ってしまうケースも少なくありません。

 メンタルヘルス不調が業務上災害と認められれば労災保険給付の対象になるほか、会社の労働時間と業務の進捗管理が不十分であることが原因であったと判断された場合には、使用者として負っている安全配慮義務(労働契約法に定められています)に違反したとして、損害賠償を請求されるリスクも発生します。

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4 問題社員(ロー・パフォーマー社員)対応

 さらに、労働時間と業務の進捗管理が難しいという特徴から、社員が仕事をしなかった(ダラダラと仕事をしていた)ため納期が守れなかったり、あるいは、高度なスキルがあると偽っていたため中途採用したものの、実際はスキルが不足しており、納期間際になってそのことが発覚するというケースもあります。

 これらの場合には、勤務成績・能率の不良や、能力不足を理由として、何らかの処分や、重大な場合には労働契約の解消(解雇)も検討せざるを得ないこともあるでしょう。

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5 偽装請負問題

 IT・情報通信業の特徴として、システムやプログラムの制作・保守などを、委託や請負の形で受注し、雇用するシステムエンジニアを委託元(発注者)に常駐させ業務を行わせる場合も少なくないと思われます。

 この場合、厚生労働省の「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」などで示されているところですが、委託(請負)の場合、委託元(発注者)はシステムエンジニアに直接指揮命令することはできません。ところが、業務を円滑に進めるなどの理由から、直接指揮命令してしまうことがあり、そうすると、偽装請負(違法派遣)と認定されてしまうリスクが発生します。

 また、労働者派遣法違反というだけでなく、委託元(発注者)とシステムエンジニアとの間に労働契約が成立することもあり得(労働契約申込みみなし制度といい、労働者派遣法に定められています)、十分な注意が必要です。

 

6 IT・情報通信業の方に当事務所がサポートできること

 当事務所は、IT・情報通信業に関する労務問題についても経験豊富です。

 前記3の残業代、メンタルヘルス不調の問題については、労働時間の管理と自由な働き方の調和を実現する必要があり、その方策として、固定残業代制度、フレックスタイム制度、テレワーク制度、始業・終業時間の繰り上げ・繰り下げ制度の導入や、残業の事前承認制、休日振替制度の適切な運用などが考えられます。

 また、固定残業代制度については、制度設計次第では残業代への充当は認められないと判断した裁判例も多く出ていますし、前記4の問題社員、前記5の偽装請負問題についても、法的判断に基づく対応が必要になります。そのため、労働問題を専門とする弁護士にご相談いただくことが有益です。

 前記のリスクを顕在化させないため、当事務所にご相談ください。

Last Updated on 2024年8月30日 by loi_wp_admin


この記事の執筆者:弁護士法人ロア・ユナイテッド法律事務所
当事務所では、「依頼者志向の理念」の下に、所員が一体となって「最良の法律サービス」をより早く、より経済的に、かつどこよりも感じ良く親切に提供することを目標に日々行動しております。「基本的人権(Liberty)の擁護、社会正義の実現という弁護士の基本的責務を忘れず、これを含む弁護士としての依頼者の正当な利益の迅速・適正かつ親切な実現という職責を遂行し(Operation)、その前提としての知性と新たな情報(Intelligence)を求める不断の努力を怠らず、LOIの基本理念である依頼者志向を追求する」 以上の理念の下、それを組織として、ご提供する事を肝に命じて、皆様の法律業務パートナーとして努めて行きたいと考えております。現在法曹界にも大きな変化が起こっておりますが、変化に負けない体制を作り、皆様のお役に立っていきたいと念じております。