団体交渉・労働組合対応(ユニオン)を弁護士に依頼するメリットとは?対応の流れを解説!

◆突然、従業員の一人が、合同労組に加入したと社内で公表した
◆突然、会社宛てに、合同労組から文書が送られてきた
◆朝、会社に出勤したら、事務所の前で合同労組が大勢で街宣活動を始めていた・・・

 このような事態が起きたとき、経営者は、何としても合同労組から会社を守らなければなりません。しかし、「どう対応したらよいのかわからない」という経営者は少なくないでしょう。ここでは、合同労組への初動対応を解説します。

 

1 合同労組(ユニオン)とは

 大きく区分すると、労働組合には、企業内の労働組合と、労働者が一人で加入できる外部の労働組合(「合同労組」ないし「ユニオン」と呼ばれるもの)があります。労働者は、社内に組合がない場合はもちろん、社内に組合がある場合でも、あえてこれに加入せずに、外部の合同労組に加入することができます。合同労組に加入する労働者は、一定額ないし賃金の一定割合に相当する額を組合費として合同労組に納める代わりに、使用者との間の労務問題の解決を合同労組に依頼することができます。合同労組の活動の結果、労働者が使用者から金銭を得た場合には、労働者は、得られた金銭の一部を「負担金」などの名目で合同労組に支払います。

 労働者が合同労組に加入するタイミングは、使用者との間ですでに紛争が発生している場合が多いようですが、中には過激な組合活動を展開する目的で、すでに合同労組に加入している状態で入社してくるような活動家タイプの労働者もいます。このようなタイプの労働者を採用段階で見抜くことは、簡単なことではありませんので、労働組合対応の経験に乏しい中小企業が、運悪くこのような労働者を採用してしまった場合には、合同労組によって食い物にされてしまう危険が生じます。

 

2 合同労組の性格を見極める

 ひと口に合同労組と言っても、その性格は、穏健なものから好戦的なものまで様々です。前者であれば、交渉を通じて現実的な解決策を探ることも十分に可能ですが、後者の合同労組の中には、会社に対して法外な要求を突き付けたうえで、近隣でビラを配ったり、街宣活動を展開したりして、レピュテーションリスクの失墜を危惧する経営者に強烈な圧力をかけてくるものもあります。さらには、訴訟の提起や労働委員会への救済申立てなど、合法的なあらゆる手段を駆使して自分たちの要求を通そうとしてきたりもします。

 従業員の合同労組への加入が発覚した場合には、まずは合同労組がどちらのタイプに該当するのかを慎重に見極める必要があります。

 

3 合同労組への対応の手順①(団体交渉申入書の受領)

 会社に対する合同労組の最初の活動は、当該会社に所属する労働者が合同労組に加入したことを知らせる文書(組合加入通知)とともに、当該労働者にかかる特定の労働条件について団体交渉を申し入れる旨の文書(団体交渉申入書)を送り付けるというものです。この団体交渉の申入れを拒否したり、申入書の受領を拒んだりしてしまうと、使用者が不当労働行為(労働組合法7条)に問われてしまう危険が非常に高くなるので、申入書はともかく受領したうえで、この段階で速やかに労務問題に精通する弁護士に相談すべきです。初動を誤ると、合同労組に優位なポジションを与えてしまい、その後の交渉にも支障が生じてしまいます。合同労組はいわば「プロ」ですから、使用者側もプロの助力を受けることをためらうべきではありません。

 

4 合同労組への対応の手順②(団体交渉の日時・場所の取り決め)

 合同労組からの団体交渉申入れに対しては、基本的には、これに応じる必要があります。もっとも、交渉の日時や場所、その他の交渉の条件については、使用者側がイニシアチブをとることも、できないわけではありません。多くの場合、団体交渉申入書に記載されている交渉日時は、使用者にとって準備の期間が不足する場合が多いので、使用者側の都合で一定期間は交渉日を先延ばしすることも、状況によっては十分に可能です。また、交渉場所も、申入書では合同労組の事務所内となっていることがありますが、必ずしもこれに従う必要はありません。組合事務所など相手の支配領域内での交渉は、避けるほうが無難でしょう。他方で、自社の会議室等を交渉場所とすると、他の従業員に不安を与える可能性もあります。そこで、当事務所では、公共の施設(公民館の会議室など)や民間の貸会議室などを事前に確保し、これを交渉場所として合同労組に逆提案するという対応を推奨しています。

 

5 合同労組への対応の手順③(団体交渉の実施)

 以上の準備を経て、第1回の団体交渉を実施することになりますが、やはり、最初の団体交渉申入書が届いた時点で、速やかに弁護士に相談することをお勧めします。労務問題に精通した弁護士に対応を委託すれば、使用者は、上記の手順を間違えないだけでなく、労働者との間の法律関係(立場が強いか弱いか)や具体的な交渉方針についても、事前に十分な説明を受け、検討することが可能です。団体交渉の場にも、弁護士が使用者側の代理人として同席し、積極的に発言して交渉をリードしますので、会社の負担は格段に軽減されます。

 団体交渉においては、合同労組は、粗野な発言で使用者側を挑発してきたり、法律的な議論を投げかけることによって、使用者側の出席者を委縮させようとしてきたりすることがあります。団体交渉において、使用者側の出席者が合同労組やその組合員を誹謗するような発言をすると、その発言自体が不当労働行為と評価されてしまうこともありますし、反対に、そのような事態を怖れて押し黙ってしまうと、合同労組にやり込められてしまいます。「何を言うべきか」、「何を言ってはならないか」を的確に判断できる自信がない場合には、弁護士に同席を依頼して交渉をリードしてもらうのが得策です。

 

6 合同労組への対応の手順④(紛争の解決へ向けて)

 使用者は、合同労組の要求を必ず受け入れなければならないというわけではもちろんありません。不当な要求は断固拒否し、会社の正当な利益を守らなければなりません。他方で、使用者の側にも落ち度や弱点がある場合には、紛争が訴訟等に発展する前に、最小限の譲歩で事態を収拾するという柔軟性も必要です。

 例えば、合同労組が解雇された労働者(組合員)の職場復帰と解雇日以降の賃金の支払を要求してきたとします。解雇が有効である可能性が高ければ、要求を全面的に拒否するというのが基本路線になりますが、反対に、訴訟になれば解雇が無効と判断され敗訴する可能性が高い事案では、合同労組の要求する最悪の結果(被解雇者の職場復帰)を回避すべく、退職の確認と引き換えに相応の解決金を支払うという選択があり得ます。このような判断には、過去の膨大な裁判例を踏まえた見極めが必要です。根拠なく強気の姿勢を貫いて失敗するのも、合同労組の威圧に負けて無用な譲歩を繰り返すのも、会社にとっては大きな損失です。合同労組が介入してきた場合には、まずは専門家に相談することをお勧めします。

 

7 合同労組によるビラ撒きや街宣活動について

 合同労組の常とう手段であるビラ撒きや街宣活動は、たとえその主張が一方的で悪意のこもったものであったとしても、多くの場合、正当な言論活動として違法とは評価されません。インターネット上に掲載されたものであっても同様です。もっとも、表現内容が虚偽である場合や、事実に反する場合には、違法と評価されることもあります。

 一方、合同労組の中には、あえて社長など会社関係者の自宅近辺で街宣活動を行ったり、さらには、会社の取引先の営業所の前で街宣活動を行ったりする過激なものもありますが、このような活動は、その態様の点で違法と評価され、裁判においても、合同労組に対する損害賠償請求や街宣活動の差し止め請求が認められています。

 とはいえ、合同労組の活動が正当なものなのか、そうでないのかは、組合側の表現の自由と、会社側の名誉や信用、平穏に営業活動を営む権利との調整の問題であり、個々の事案ごとの微妙な判断になります。この場面でも、やはり専門家の意見を聴くべきです。

 

8 当事務所がサポートできること

 当事務所は、これまでに多くの企業から合同労組への対応策について相談や依頼を受けており、豊富な経験を蓄積しています。不当労働行為や労働委員会の手続に関する書籍を発行するなど、法理論の面でも万全の準備を整えています。合同労組には穏健なものから過激なものまで様々なタイプがありますが、当事務所は、各々の労組の性格に応じて、的確な助言をすることができます。

 団体交渉にも企業の代理人として同席しますので、企業側の出席者の負担を最小化することが可能です。団体交渉では、合同労組の主張の当否を即時に判断し、不当労働行為のリスクを回避しつつ効果的な反論を行います。団体交渉は1回だけでは終わらない場合も多いので、紛争が解決するまで、きめの細かいリーガルサービスを提供します。

Last Updated on 2023年12月18日 by loi_wp_admin


この記事の執筆者:弁護士法人ロア・ユナイテッド法律事務所
当事務所では、「依頼者志向の理念」の下に、所員が一体となって「最良の法律サービス」をより早く、より経済的に、かつどこよりも感じ良く親切に提供することを目標に日々行動しております。「基本的人権(Liberty)の擁護、社会正義の実現という弁護士の基本的責務を忘れず、これを含む弁護士としての依頼者の正当な利益の迅速・適正かつ親切な実現という職責を遂行し(Operation)、その前提としての知性と新たな情報(Intelligence)を求める不断の努力を怠らず、LOIの基本理念である依頼者志向を追求する」 以上の理念の下、それを組織として、ご提供する事を肝に命じて、皆様の法律業務パートナーとして努めて行きたいと考えております。現在法曹界にも大きな変化が起こっておりますが、変化に負けない体制を作り、皆様のお役に立っていきたいと念じております。