労基署対応を弁護士に依頼するメリットとは?対応の流れを解説!

 労働基準監督署(労基署)の監督(臨検)は、事前の予告なく実施されます。

 当事務所では、「労基署の臨検が実施されたということは、当社は罰せられるのか」、「労基署の臨検で資料の提出を求められたが、応じなければならないのか」、「労基署から是正勧告を受けたが、従わなければならないのか」、など、労基署への対応について、多くのご相談を受けております。

 

1 労働基準監督署とは

(1)労働基準監督署とは

 労働基準法や、労働安全衛生法などの関係法令によって労働者の労働条件の規制がなされていますが、その実効性を確保するためには行政機関による監督が不可欠です。そのため、厚生労働省の第一線機関として、労働基準監督署(労基署)が全国に置かれています。

 労基署には、労働基準監督官という専門職の監督行政官が配置されていますが、この監督官には、労基法違反などの事案について、行政事務だけでなく、司法警察員として司法警察事務を行う権限も与えられています。つまり、警察官と同様に、逮捕状や捜索・差押令状の請求、検察官への事件送致も行うことができるのです。

(2)労基署の職務内容

 労基署の職務を大きく分けると、以下の3つになります。

 

① 労働基準関係

労基法などの関係法令に関する各種届出(たとえば、就業規則や36協定など)の受付、相談対応、臨検監督、指導、是正勧告、司法警察事務など

 

② 労働安全衛生関係

機械や設備の設置に関する届出の審査や、職場の安全、健康確保に関する技術的な指導など

 

③ 労災保険関係

仕事に関する負傷などに対する労災保険給付、労働保険の適用・徴収など

 

2 労基署の監督(臨検)への対応

 労働基準監督官の権限として、労基法101条は、「事業場、寄宿舎その他の附属建設物に臨検し、帳簿及び書類の提出を求め、又は使用者若しくは労働者に対して尋問を行うことができる」としています。

 臨検とは、労基法違反の事実がないかどうかを調査する目的で事業場などに立ち入ることをいいます(これは、行政上の権限であり、前記の司法警察員としての捜索ではありません)。

 臨検監督の種類としては、次のものがあります。

① 定期監督

 労基署が主体的に定めた監督計画に基づいて、任意に事業場を選んで行うものです。

 臨検監督の多くがこの定期監督です。

 ちなみに、令和5年度においては、ネット上の求人情報や書込みの監視や労働者からの相談などから得た各種情報から1か月の時間外・休日労働が80時間を超えていると考えられる事業場と、過重労働による過労死等の労災請求が行われた事業場について、全数監督を実施する計画であるとのことです(令和5年6月1日付労働新聞ニュース)。

② 申告監督

 労働者(退職者も含まれます)は、事業場に労働基準法令に違反する事実がある場合には、その事実を労働基準監督官に申告することができますが、その申告をきっかけとして行われるのが申告監督です。

 社内に労基法違反であるサービス残業(残業代の不払い)や労働安全衛生法違反があり、法令遵守の観点から、いわば公益通報として労働者が申告するというケースもあります。もっとも、現実的に多いのは、会社と申告者との個別のトラブルを原因とするものです(残業代の不払いなどがトラブルの原因の場合だけでなく、たとえば、当事務所の経験しているところでは、セクハラ・パワハラなどの被害を訴えても会社が動いてくれないと会社に不満を持った申告者が、残業代の不払いなどを申告するというケースもありました)。

③ 災害時調査

 労働災害が発生した場合に、原因や労働環境の実態、労働安全衛生法違反の有無の確認を行うものです。

 

3 労基署の監督・指導の流れ

 臨検監督の一般的な流れは以下のとおりです。

① 事業場を訪問

 原則として予告なく実施されます。

② 事業場への立入調査(事情聴取や帳簿・書類の確認など)

 労働者名簿、賃金台帳、就業規則、36協定、タイムカードなどの提出が求められ、確認を受けます。

 また、実際の労働環境を、労働基準監督官が確認することもあります。

 さらに、必要に応じて、労働者や役員が事情聴取を受けることもあります(これらは、行政上の権限であり、前記の司法警察員としての差押や尋問ではありません)。

 立入調査後に、必要な事項に関する報告を求められることもあります。

 その一方で、事業者側から、意見を表明することもあり得ます。

③ 文書指導

 調査の結果、法令違反が認められなければ、それで臨検監督は終了となります。

 但し、法令違反には至っていない場合でも、行政指導による改善が必要であると判断された場合には、指導票が交付されることになります。

 他方、法令違反が認められた場合には、その点を指摘するとともに指導内容を記載した是正勧告書が交付されることになります。ちなみに、下記厚生労働省HPによれば、令和3年度における長時間労働が疑われる事業場における違反内容は、多い順に、違法な時間外労働、賃金不払残業、過重労働による健康障害防止措置の未実施であったとのことです。

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_27109.html

 また、危険性の高い機械・設備などに対して、その場で機械などの使用停止・変更や作業の停止等を命ずる行政処分を行う際には、使用停止等命令書が交付されます。

④ 改善・是正報告

 指導票や是正勧告書には、「いつまでに」と、改善・是正を行った上で報告すべき期限が記載されます。

 改善・是正を実施した事業主は、上記期限までに、改善・是正の内容を記載した報告書を労働基準監督署に提出することになります。

 それで改善・是正が確認されれば、それで臨検監督は終了となります。

 場合によっては確認のため、再度の立入調査が実施されることもあります。

 また、たとえば労働時間に関する法令違反の場合、是正がなされた後も、労働時間相談・支援班(事業場による自主的な取組みが促進されるよう、集団指導や個別訪問などが実施されます)や、働き方改革推進支援センターの活用を勧められることがあります。

⑤ 捜査・送検

 法令違反が重大であったり、何度も是正勧告を受けても改善されないなど悪質な場合には、労働基準監督官は、司法警察員としての職務に移行することになります。

 具体的には、裁判官の令状の発付を受けて捜索・差押、逮捕などを行い、刑事事件として検察官に送致します。検察官は独自に証拠収集した上で、起訴するか不起訴とするかの判断を行います。

 なお、労働安全・衛生管理の重大な不備や労災かくし、36協定違反といった事例だけでなく、事業主の対応いかんによっては、解雇予告手当の不払いといった一見して重大とはいい難い事例でも送検されているケースもありますので、注意が必要です。

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4 労基署への対応方法

 労働基準監督官の臨検監督に応じなかったり、虚偽の内容の帳簿・書類を提出した場合には、労基法120条で罰則が定められています(30万円以下の罰金)。

 たとえば帳簿・書類の提出に一度応じなかったからといって、直ちに罰則が適用されることはないとしても、労働条件に関する法令遵守や、労働者をはじめとするステークホルダーの人権デュー・ディリジェンスの一環としても、臨検監督には誠実に応じる必要があります。

 また、前記のとおり、不誠実な対応を続けていると、法令違反が認められる場合、刑事事件として検察官送致されてしまうおそれも出てきます。事情聴取、報告、資料提出に誠実に対応し、正すべきところは正せば、仮に法令違反が認められるとしても、行政手続き(是正勧告)で終わるケースが多いと思われます。

 

5 労基署対応について当事務所がサポートできること

 以上のとおり、臨検監督に対しては誠実に対応すべきです。

 当事務所は、労基署対応についても多くの経験を有していますので、流れ全体や、労基署に提出すべき書類、改善・是正内容に関するアドバイスはもちろん、代理人として、資料収集のお手伝いや、労働基準監督官に対する意見の作成・表明などを行い、会社の真の実態に即した適正な判断を労働基準監督官ができるようにするためのサポートを行うことが可能です。

 特に、法的な評価が伴う事柄、たとえば残業代不払いの事例でいえば、労基法上の管理監督者への該当性が問題になっている場合などは、労働問題を専門とする弁護士にご相談いただくことが有益であると考えます。

Last Updated on 2023年12月18日 by loi_wp_admin


この記事の執筆者:弁護士法人ロア・ユナイテッド法律事務所
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