合同労組・ユニオンの「ビラ貼り」「ビラ撒き」「街宣活動」に対する会社側の対応方法とは?-弁護士がポイントについて解説!-

合同労組・ユニオンの「ビラ貼り」「ビラ撒き」「街宣活動」に対する会社側の対応方法とは?-弁護士がポイントについて解説!-

文責:石居 茜

1 合同労組の「ビラ貼り」「ビラ撒き」「街宣活動」等とは?

(1)合同労組(ユニオン)とは

合同労組(ユニオン)は、外部の労働組合のことで、企業や職場の枠にとらわれることなく個人で加入できる労働組合です。

自社の従業員が合同労組に加入し、その外部労組から団体交渉を申し込まれ、その内容が、その従業員の労働問題に関する事項や労働条件に関する事項の場合などに、団体交渉に応じる必要が出てきます。

本記事の内容は、合同労組だけでなく、企業内組合の場合でも当てはまりますが、会社と対立構造となりやすい外部労組の場合に紛争が起きやすいといえます。

(2)「ビラ貼り」「ビラ撒き」「街宣活動」とは

組合がその活動内容を労働者にアピールしたり、組合員を勧誘するため、あるいは、会社の人事政策や企業活動を批判するためにビラ貼りやビラ撒き、ときには街宣活動等をすることがあります。

2 組合の「ビラ貼り」「ビラ撒き」「街宣活動」に関する裁判例

(1)会社内でのビラ貼りやビラ撒きに関する裁判例

そもそも、会社には、組合活動のために便宜を提供すべき義務があるわけではなく、会社内施設への「ビラ貼り」についても、会社の許可や会社との合意がなければ原則として認められるものではありません。会社の許可や会社との合意がない場合は、正当な理由がある場合に限り許容されることがあるという考え方になります。

判例では、組合による企業施設の利用は、本来会社との合意に基づいて行われるべきであり、利用の必要性があるからといって組合が利用権限を持ったり、会社が利用を認めなければならないわけではなく、許可を受けない利用は、会社の権利濫用と認められるような特別な事情のない限り正当性はないと判断されています(国鉄札幌運転区事件・最三小判昭和54年10月30日)。

その事案では、組合掲示板以外の施設へのビラ貼付が禁止されており、ビラの大きさ・色彩・枚数等に照らし貼付されたビラが職員等の目に直ちに触れ、組合活動に関する訴えかけを行う効果を及ぼすものとみられるなどの事実関係において、組合掲示板以外の施設へのビラ貼付は、施設を管理利用する会社の権限を侵害し、企業秩序を乱すものであり、正当な組合活動に当たらないと判断されました。

また、掲示物の記載内容が機密保持義務に抵触し、職場規律を乱すとし、会社が掲示物を撤去した行為が不当労働行為に当たらないとした裁判例もあります(東海旅客鉄道事件・静岡地判平成28年1月28日・労判1173号83頁)。

他方で、私立学校の職員室で行われたビラ撒きに対する懲戒処分の事例で、ビラの内容・配布の態様等に照らし、配布が学校内の職場秩序を乱すおそれがなく、生徒に対する教育的配慮に欠けるおそれのない特別な事情が認められる場合に、これを理由として懲戒処分は許されないとした判例があります(倉田学園事件・最三小判平成6年12月20日・労判669号13頁)。

(2)ビラの内容に関する裁判例

組合が配布するビラやインターネットにおける言論活動といえども無制限に許容されるものではなく、その内容が企業の経営政策や業務等に関し事実に反する記載をしたり、事実を誇張、歪曲して記載したり、会社の業務に重大な支障を生じさせるような場合には、かかる活動をした労働者への懲戒処分が有効とされたり(中国電力事件・最三小判平成4年3月3日・労判609号10頁)、名誉棄損による損害賠償請求が認められた裁判例もあります(東京地判平成20年10月1日・判時2034号60頁)。

ただし、組合の情宣活動の場合、裁判所が一定の保護をする事例もあり、例えば、ビラ撒きの事案で、ビラに記載された事実は、組合としては真実と信じるにつき相当の理由があり、「職務事務員の使い捨て」などの組合の評価は組合活動として社会通念上許容される範囲内であり、ビラの表現は会社の労政政策を批判し、公衆に支援を呼びかけるものとして位置づけられ、会社の名誉・企業イメージの信用を棄損する目的で行ったものではなく、これにより会社の営業等に影響が生じ、具体的な損害が生じたとまではいえず、インターネット等が普及した今日においては、ビラ配布等の態様は、組合活動としては社会通念上許容される範囲内である等として、損害賠償請求が否定されている例もあります(エイアイジー・スター生命保険事件・東京地判平成17年3月28日・労判894号54頁)。

(3)街宣活動に関する裁判例

街宣活動が、企業経営者の私生活の領域において行われ、経営者個人の平穏を侵害し、地域社会における名誉や信用を棄損し、会社の名誉・信用を棄損し平穏に営業活動を営む権利を侵害するものであるとされ、今後もこれらの行動に出る蓋然性が高いと判断される場合には、街宣活動やビラ配布行為の差し止めが認められ、損害賠償請求が認められている例もあります(東京・中部地域労働組合事件・東京地判平成16年11月29日等)。

3 懲戒処分や法的措置が可能な場合は?

上記で紹介した判例等を踏まえると、会社施設へのビラ貼りや会社内でのビラ撒きは、原則として禁止することはできますが、違反に対して懲戒処分を検討する場合には、その態様や影響などを考慮し、慎重に判断することが必要といえます。また、懲戒処分が可能な場合でも、ビラの内容や配布等の態様にも寄りますが、重い処分は相当性を欠き無効と判断されるリスクがあるといえます。

組合の会社外での就業時間外の活動は、原則として自由であり、これを禁止することはできませんが、ビラ等の表現内容や活動の態様にもよりますが、ビラやインターネット等に事実に反することを記載し、会社の業務に重大な支障を生じさせるような場合には、懲戒処分や名誉棄損による差し止め、損害賠償請求などを検討できる場合があります。

4 合同労組対応について当事務所でサポートできること

当事務所では、労働問題に精通した弁護士が多数在籍しており、在籍するほとんどの弁護士が、外部労組との団体交渉に会社側で立会い、交渉した経験を多数有しています。よくあるご相談としては、従業員との個別の労働紛争をきっかけに、その従業員が合同労組に加入し、合同労組から団体交渉の申し入れを受けるというケースです。そういった事案でも、当事務所は、団体交渉の立会いを受任し、事実関係を調査して、丁寧に回答し、粘り強く交渉を重ねることで紛争を解決した事例は多数あります。外部労組との団体交渉は、ときに非常に厳しい交渉になることもありますが、経験豊富な当事務所が肉体的、精神的に会社及び人事部のサポートをいたします。また、企業内に組合ができたり、既に存在する場合に、組合との定期的な交渉や、人事政策の変更に伴う組合との交渉に関するアドバイス、本記事で記載した組合の活動に対する対応方法のアドバイス等も行います。労働組合対応は、当事務所のような労働問題に精通した専門家に相談しながら対応することをお勧めします。組合問題がありましたら、当事務所にご相談ください。

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Last Updated on 2024年3月8日 by loi_wp_admin


この記事の執筆者:弁護士法人ロア・ユナイテッド法律事務所
当事務所では、「依頼者志向の理念」の下に、所員が一体となって「最良の法律サービス」をより早く、より経済的に、かつどこよりも感じ良く親切に提供することを目標に日々行動しております。「基本的人権(Liberty)の擁護、社会正義の実現という弁護士の基本的責務を忘れず、これを含む弁護士としての依頼者の正当な利益の迅速・適正かつ親切な実現という職責を遂行し(Operation)、その前提としての知性と新たな情報(Intelligence)を求める不断の努力を怠らず、LOIの基本理念である依頼者志向を追求する」 以上の理念の下、それを組織として、ご提供する事を肝に命じて、皆様の法律業務パートナーとして努めて行きたいと考えております。現在法曹界にも大きな変化が起こっておりますが、変化に負けない体制を作り、皆様のお役に立っていきたいと念じております。