
文責:木原 康雄
労働者派遣事業は、深刻な人手不足の状況において、重要な役割を担っています。もっとも、派遣会社(派遣元)・派遣労働者・派遣先という三者間の複雑な法律関係の上に成り立っており、また、労働者派遣法上の様々な規制も遵守する必要があります。
労働者派遣法に抵触する行為を行ってしまうと、行政処分による事業停止等の危険性がありますし、派遣労働者または派遣先との間で法的トラブルが発生すると、多額の損害賠償義務を負うだけでなく、SNSでの炎上によるレピュテーションリスクなど、経営の根幹を揺るがす事態に発展しかねません。
本稿では、派遣会社が直面する経営リスクを最小化するために、弁護士がどのような役割を果たすことができるのかを解説します。
1.派遣会社が直面する法と弁護士の必要性
1-1. 派遣法改正への対応と最新のコンプライアンス動向
労働者派遣法は、派遣労働者の保護を目的とした改正がなされています。2020年の「同一労働同一賃金」の導入、派遣労働者の待遇決定方式(労使協定方式または派遣先均等・均衡方式)の運用、キャリア形成支援など、対応すべき事項は増え続けています。
これらの法律の変化への対応について、派遣会社だけで正確な判断を行うのは難しい場合もあります。最新の法改正情報を実務に落とし込むには、法解釈の専門家である弁護士の視点が重要といえます。
1-2. 労働者とのトラブル、取引先との契約問題など潜在的な法的リスク
派遣元が抱えるリスクは、大きく分けて「対労働者」と「対派遣先」の二方向から生じます。
●対労働者: 残業代未払い、ハラスメント(セクハラ・パワハラ)、解雇や雇い止めをめぐる紛争。特に派遣先で発生したハラスメントであっても、派遣元としての安全配慮義務を問われるケースが増えています。
●対派遣先: 労働者派遣契約の解釈をめぐる対立、損害賠償責任の押し付け、派遣労働者の引き抜き(直接雇用)問題。これらは、初期対応を誤ると問題が大きくなってしまいます。
1-3. 法務部門を持たない・強化したい派遣会社の課題解決策
中堅・中小の派遣会社の多くは、専門の法務部を持たず、営業幹部や総務担当者が法務を兼務しているのが実態であると思われます。
しかし、現場の担当者は「売上」や「マッチング」に追われ、なかなか複雑な法的検討に時間を割くことができないのではないでしょうか。
そこで、弁護士を活用することで、担当者は本来の業務に集中でき、同時に会社としての法的防衛力を向上させることができます。
2.派遣会社における弁護士の具体的な役割とメリット
2-1. 労働者派遣契約のリーガルチェックと作成支援
契約書はトラブルを防ぐための大切な武器です。
弁護士は、労働者派遣契約に、賠償責任の範囲を限定する条項や、トラブル発生時の費用負担を明確にする条項を盛り込むなど、派遣会社に不利な契約を回避するためのリーガルチェックを行うことが可能です。
2-2. 派遣労働者との紛争への対応と解決
労働者とトラブルになった際、弁護士は会社側の代理人として交渉にあたります。感情的になりやすい当事者同士のやり取りを遮断し、法律と証拠に基づいて交渉を進めることで、早期の円満解決を目指します。
もしその後、労働審判や訴訟に発展した場合でも、同じ弁護士が一貫した方針で対応することが可能になります。
2-3. 行政指導・行政処分リスクの低減と是正指導への対応支援
労基署による立ち入り調査(臨検)や、指導・是正勧告への適切な対応は、労働者派遣事業を継続していく上で重要です。
弁護士は、是正報告書の作成の支援など、対応上のアドバイスを行うことができます。
また、労基署と建設的な対話を行い、事業停止などの重い処分を回避することを目指します。
2-4. 労務管理体制の整備・コンプライアンス研修の実施による予防法務
トラブルが起きてから対処するのではなく、トラブルを起こさない「予防法務」に力を入れることで、コストも精神的負担も少なくすることができます。
就業規則の整備はもちろん、労働者派遣法の理解やハラスメント防止のための研修を実施することで、組織全体のコンプライアンス意識を高め、自浄作用のある組織作りをサポートすることができます。
3.弁護士に相談すべき緊急度の高いケース
3-1. 派遣先からの一方的な契約解除を通知された時
派遣先からの労働者派遣契約の中途解除は、派遣会社と労働者の雇用問題に影響します。
派遣先に対し、解除の正当性を問うとともに、契約に基づく違約金や損害賠償の請求が可能かどうかを判断する必要があります。
3-2. 労働組合から団体交渉を求められた時
突然、ユニオンなどの外部労働組合から団体交渉の申し入れがあった場合、対応を誤ると不当労働行為であるとの主張を受けるおそれがあり、初動対応における弁護士のアドバイスが有用です。
また、団体交渉の場に弁護士を立ち合わせることで、法的に適切な対応を維持し、不当な要求に対抗することができます。
3-3. 労基署からの調査が入った時
突然の臨検や、労働者の通報に基づく調査が行われる場合、その場での回答が後に大きな証拠能力を持ってしまいます。
調査が入った、あるいは入る可能性があると分かった時点で弁護士に相談し、主張の一貫性を保つための準備を行う必要があります。
4.自社に最適な弁護士の選び方と依頼のポイント
4-1. 労働法・企業法務に強い弁護士
弁護士にも得意分野があります。労働法分野、特に労働者派遣事業の実務に精通している弁護士を選ぶことが重要です。
4-2. 顧問契約とスポット契約を使い分ける
●スポット契約: 特定のトラブルが発生した際にのみ依頼する方法です。急場を凌ぐには良いですが、自社の内情を説明するところから始めるため、対応に時間を要することがあります。
●顧問契約: 毎月定額で、または従量制でいつでも相談できる方法です。日常的にメール等で気軽に相談できるため、大きなトラブルを未然に防ぐことができます。
5.当事務所のサポート内容
当事務所では、これまで数多くの派遣会社様のリーガルサポートを行ってまいりました。法的リスクという不安要素をお任せいただくことで、経営者の皆様が本来の目的である「人材の活躍と事業の拡大」に集中できるものと考えております。
まずはお気軽にご相談ください。
▼関連記事はこちら▼
派遣スタッフに労災が発生した際の派遣先・派遣元の初動対応・再発防止策について弁護士が解説
派遣契約の不適切な運用が招くリスクと弁護士による適切な対応方法
Last Updated on 2026年4月17日 by loi_wp_admin



