休職・復職を繰り返す問題社員にどう対応する?企業労務に詳しい弁護士が解説

文責:石居 茜

メンタルヘルス不調などを理由に休職と復職を短期間で繰り返す従業員への対応は、多くの企業や人事担当者様にとって極めて頭の痛い労務問題の一つです。

「主治医から復職可能という診断書が出たものの、復職後すぐに体調を崩して欠勤してしまう」「休職と復職のループが続き、現場の業務が回らない」といったお悩みを抱えておられる企業様も少なくありません。

本記事では、企業労務に精通した弁護士の視点から、休職・復職を繰り返す問題社員への適切な実務対応と、法的トラブルを防ぐためのポイントをわかりやすく解説いたします。

1. なぜ「休職と復職の繰り返し」が企業にとって深刻な問題なのか

従業員が休職と復職を繰り返す状態を放置することは、単に一人の欠勤問題にとどまらず、企業全体に深刻な悪影響を及ぼします。

現場の疲弊と周囲の社員への悪影響

復職したもののすぐに欠勤や再休職となると、その度に担当業務の引き継ぎや再割り振りが生じます。予定していた業務計画が崩れ、補填を行う周囲の社員に過度な業務負担が集中するため、現場全体の疲弊やモチベーション低下、さらには他の優良な社員の離職につながるリスクが高まります。

給与・手当や社会保険料などのコスト負担

多くの企業では休職期間中を無給とする規定を置いていますが、休職中であっても社会保険料の会社負担分(折半部分)は発生し続けます。また、短期間の復職を挟むことで休職期間がリセットされるような運用の不備があると、会社はいつまでも雇用関係を維持し続けなければならず、経済的・管理的なコスト負担が重くのしかかります。

放置することで「安全配慮義務違反」を問われるリスク

使用者は、労働契約法第5条に基づき、従業員が生命・身体等の安全を確保しつつ働けるよう配慮する「安全配慮義務」を負っています。健康状態が不十分なまま安易に復職させたり、過重労働やハラスメントなどの不調の原因を適切に調査・改善せずに業務へ就かせた結果、症状が悪化した場合には、企業が安全配慮義務違反として多額の損害賠償責任を問われるリスクがあります。

2. 主治医の「復職可能」を採用することの危険性

休職中の従業員から主治医による「復職可能」との診断書が提出された際、それをそのまま受諾して復職させることには大きな危険が潜んでいます。

治癒の定義と判断基準

休職制度における傷病の「治癒」とは、単に病状が安定したことや日常生活が送れること(寛解)ではありません。裁判例においても、治癒とは、原則として、「休職前に行っていた通常の業務を遂行できる程度に傷病等が回復したこと」、または復職後ほどなくしてその程度に回復する見込みがあることと解釈されています。

主治医の診断書と、会社が求める「業務遂行能力」の乖離

主治医は診察を通じて本人の病状経過や訴えには詳しいものの、企業の具体的な業務内容、勤務環境、求められる精神的・身体的負荷を正確に把握しているわけではありません。そのため、患者である従業員の希望に沿って「復職可能」と診断書を作成してしまうことが少なくありません。その結果、会社が求める「業務遂行能力」との間に大きな乖離が生じるのです。

産業医や専門医によるセカンドオピニオンの重要性

会社事情や業務内容を理解している産業医や会社指定医による面談を実施し、「本当に従前の業務に耐えられる状態か」を客観的に評価・判定するセカンドオピニオンを取得することが重要です。主治医と産業医の意見が異なる場合は、産業医に会社の業務内容を詳細に情報提供したうえで慎重な判断を下す必要があります。

3. 休職・復職を繰り返す社員への適切な対応ステップ

休職・復職を繰り返す問題を防ぐためには、感覚的な対応を避け、定型化された適切な手順を踏むことが不可欠です。

①復職時の面談とリハビリ出勤(試し出勤)の実施

復職にあたっては、本人・人事担当者・産業医による復職面談を行い、生活リズム、通勤耐性、復職への意欲を確認します。いきなり通常勤務に戻すのではなく、就業規則や社内規定に基づき、短時間勤務や軽易な業務から段階的に慣らしていく「リハビリ出勤(試し出勤制度)」を活用し、実際の労働耐性を見極めることが効果的です。

②復職後のパフォーマンス記録と定期的な面談

復職後も放置せず、出勤状況、業務の進捗度、勤務態度、疲労の様子などを客観的に記録に残します。定期的な面談を実施して本人の状況を把握するとともに、主治医や産業医への正確な状況伝達に役立てます。

③業務軽減措置の期間設定と「完全復帰」の期限化

復職直後の配慮措置(残業免除や軽作業への配置)は必要ですが、これらを無期限に続けると周囲の不満が溜まり、組織運営に支障をきたします。「軽減措置は最大〇か月とし、期間内に通常の業務へ完全復帰すること」といった期限と基準をあらかじめ書面で明示しておくことが求められます。

4. 休職期間に関する就業規則の見直しのポイント

休職と復職のループが発生する根本的な原因として、自社の就業規則や休職規程の不備があげられます。以下の規定が備わっているか確認し、見直しを行うことが必要です。

同一または類似の傷病による休職を合算できるか

「1か月復職したから、次に休職するときはまた新たな休職期間(例:1年間)がスタートする」という解釈を防ぐため、「同一または類似の傷病により再度の休職となる場合は、前後の休職期間を通算する」という「期間通算規定」を明確に設けておく必要があります。

「クーリング期間」の設定による休職のループ防止

復職後、一定期間(例:6か月間や1年間)無事に通常勤務を継続できた場合のみ休職期間をリセットし、その期間内に再発・欠勤した場合は「前回の休職期間の続き(残り期間の消化)」とみなす「クーリング期間規定」を設定しておくことで、休職のループ化を防止できます。

復職可否の最終決定権を会社が持つための規定

就業規則に「主治医の診断書が提出されたときは復職させる」といった受動的な記載になっていると、会社が拒否できなくなります。「復職の可否は、主治医および会社指定医(産業医)の意見を参考に、会社が最終的に決定する」と規定しておくことが不可欠です。

5. 改善が見られない場合に「退職勧奨」や「普通解雇」は可能か

適切なステップを経ても勤務状態が改善せず、業務に耐えられない場合、企業として雇用関係を終了させる検討に入ることになります。

解雇が認められるための高いハードルと必要な証拠

日本の労働法下では、解雇権濫用法理(労働契約法第16条)により、普通解雇のハードルは極めて高く設定されています。職種限定のない雇用契約の場合、配置転換や軽減業務への配置可能性を十分検討したか(片山組事件・最高裁判例など)、復職拒否や解雇に至る客観的・合理的な理由と証拠(勤務記録や医師の意見書など)が揃っているかが厳格に問われます。

「休職期間満了」による自然退職・当然退職の進め方

無理に普通解雇を行うよりも、就業規則に基づき「休職期間が満了しても治癒していない場合は自動的に退職(自然退職・当然退職)とする」手続きを進めるのが実務上最も一般的かつリスクが低い方法です。ただし、満了直前に復職申出があった場合の可否判断は慎重に行う必要があります。

メンタルヘルス不調を理由とした解雇の法的リスク

従業員側から「メンタル不調の原因は職場のパワハラや過重労働である」と主張された場合、解雇無効を訴える地位確認請求訴訟や、安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求を起こされる重大な法的リスクが存在します。

6. 休職・復職トラブルの解決を弁護士に依頼するメリット

休職・復職トラブルは、医学的知見と高度な労務法的判断が複雑に絡み合う分野です。早い段階で弁護士に相談・依頼することには大きなメリットがあります。

過去の経験に基づいた、個別の事案に応じた提案

企業の規模、業種、就業規則の内容、従業員の症状や認否状況に応じ、裁判例の傾向を踏まえた現実的かつ最適な見通しと対応手順を提案できます。

労働審判・訴訟を見据えた法的根拠のある文書作成

将来的に紛争化(労働審判や訴訟)した場合でも会社側の主張が認められるよう、休職命令書、復職不可の通知書、就業規則の改訂案など、法的根拠を備えた社内文書の作成・整備を行います。

団体交渉や労働基準監督署への対応をアドバイス

従業員が労働組合に加入して団体交渉を求めてきたり、労働基準監督署へ申告・労災申請を行った場合でも、弁護士が窓口となり法的根拠に基づいた交渉アドバイスや代理対応を行います。

7. 当事務所のサポート内容

当事務所では、メンタルヘルス不調に伴う休職・復職トラブルや、いわゆる問題社員対応に関する企業側のご相談を数多く受託してきた豊富な実績がございます。

・休職規程・就業規則の点検・改訂サポート(通算規定やクーリング期間の整備)
・復職可否判断に関する個別事案のスポット法務相談
・面談立ち合い・社内通知文書の作成・確認
・労働組合との団体交渉、労働審判・訴訟の代理対応

「復職を繰り返す社員への対応に困っている」「就業規則の休職規定を見直したい」とお悩みの企業様・人事担当者様は、紛争が深刻化する前に、ぜひお早めに当事務所までご相談ください。

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Last Updated on 2026年9月28日 by loi_wp_admin


この記事の執筆者:弁護士法人ロア・ユナイテッド法律事務所
当事務所では、「依頼者志向の理念」の下に、所員が一体となって「最良の法律サービス」をより早く、より経済的に、かつどこよりも感じ良く親切に提供することを目標に日々行動しております。「基本的人権(Liberty)の擁護、社会正義の実現という弁護士の基本的責務を忘れず、これを含む弁護士としての依頼者の正当な利益の迅速・適正かつ親切な実現という職責を遂行し(Operation)、その前提としての知性と新たな情報(Intelligence)を求める不断の努力を怠らず、LOIの基本理念である依頼者志向を追求する」 以上の理念の下、それを組織として、ご提供する事を肝に命じて、皆様の法律業務パートナーとして努めて行きたいと考えております。現在法曹界にも大きな変化が起こっておりますが、変化に負けない体制を作り、皆様のお役に立っていきたいと念じております。