労働問題を未然に防ぐために早期に弁護士に相談する必要性について弁護士が解説

文責:松本 貴志

1 なぜ弁護士への早期相談が重要なのか

近年、働き方改革やコンプライアンス意識の高まりに伴い、労働紛争のリスクは増大しています。当事務所にも、問題社員対応、解雇、残業代未払い、ハラスメント、労災など、さまざまな労働問題のご相談が寄せられますが、早期のご相談が問題の早期解決につながったケースや、逆に、初動対応が遅れてしまったために、事態が深刻化してしまったと感じるケースもございます。

労働問題が生じることで、企業にとっては大きな経済的損失、社会的信用の低下、そして従業員からの信頼低下やそれに伴う労働力の喪失といった様々なリスクが発生する可能性がありますが、弁護士に早期に相談することにより、リスクを最小限に抑えることが期待できます。

具体的には、弁護士に早期に相談することで、以下のようなことが期待できます。

まず、労働問題が顕在化する前、つまり、まだ特定の従業員との関係で問題が顕在化する前の段階で相談することで、潜在的な法的リスクを正確に把握することができ、紛争を予防することが期待できます。

例えば、労働問題の取り扱いの多い弁護士事務所に相談することで、現在の労務管理体制、就業規則、労働時間管理の実態等を予防法務の観点から精査し、将来的に紛争の火種となり得る箇所を特定します。その上で、法改正に対応した就業規則の改定、よりリスクの低い労働時間管理体制の構築などを通じて、紛争を予防することが期待できます。

また、仮に紛争が発生した場合、企業にとって最も不利になるのが「証拠」がないことです。特定の従業員との労働問題の兆候が現れた時点で弁護士が関与することで、当該労働問題に関する証拠となり得るメール、録音、議事録、勤怠データなどの客観的な証拠の収集に関するアドバイスを受けることが期待できます。

早期にこれらの証拠を確保しておくことで、将来の訴訟や労働審判等の法的手続きに備えることができます。

▼関連記事はこちら▼
就業規則の作成・チェックを弁護士に依頼するメリットとは?対応の流れを解説!

2 事後対応では手遅れになる理由

逆に、労働問題への対応が遅れることには、以下のようなリスクが伴います。

まず、企業の当該労働問題において生じる金銭的損害が増大するリスクがあります。

例えば、未払い残業代請求においては、請求対象となる労働時間が長期化すれば、その分だけ支払うべき未払い残業代も増大し、遅延損害金もどんどん加算されていきます。

また、未払い残業代請求等においては、一人の問題が契機となって、他の従業員からも同様の請求を受けるリスクがありますので、請求が派生しないように早期に解決することが重要です。

一方で、不当解雇に関する訴訟においては、解雇期間中の賃金(バックペイ)を請求されることになりますが、解決が遅れれば、その分だけ請求される賃金が積み重なることになりますので、仮に敗訴判決となってしまった場合には、金銭的な損失は莫大なものになる可能性があります。

労働問題の解決が遅れることは、企業のレピュテーションリスクにもつながります。

紛争が顕在化する前に早期に社内で解決した場合には、企業イメージに傷がつく可能性は低いですが、労働問題が紛争化し、民事訴訟や報道・SNS等により社外に漏れた場合には、企業の社会的な信用が毀損されてしまう可能性があります。

社会的な信用が毀損されてしまうことで、採用活動に影響が出てきたり、取引先や顧客からの信用失墜により取引停止や売り上げの減少につながったり、従業員の士気低下により優秀な人材を喪失ってしまったりするリスクがあります。

加えて、従業員との関係性が悪化してから弁護士に相談した場合には、円満な解決の可能性が低くなり、訴訟や労働審判といった法的手続きに進まざるを得ない場合もあります。

3 弁護士に相談すべき予兆とタイミング

労働問題は、それが顕在化する前に何らかの予兆があることが多いですので、その予兆を見逃さないことが重要です。

例えば、内部通報や従業員からの特定の不満の増加が労働問題の「予兆」であるケースが多いので、これらの正当性について弁護士への相談を通じて吟味していく必要があります。

また、特定の従業員による労働基準監督署への申告や労働基準監督署による調査により、貴社の潜在的なリスクが発覚するケースがあります。

これらの予兆がある場合には、まずは労働問題を多く取り扱っている弁護士に相談することで、労働問題が発生する潜在的なリスクを排除できる可能性があります。

弁護士に相談するべきタイミングとしては、早ければ早いほど望ましいです。

例えば、解雇処分や懲戒処分等の重要な人事処分を下す場合には、処分を下す前の検討段階において相談することで、後々処分の有効性が争われるリスクや無効となるリスクを低下させることが期待できます。

また、問題社員対応においても、対象の従業員との関係性が悪化する前の初期段階で弁護士に相談し、アドバイスを基に進めていくことで、穏当な合意退職につながる可能性が高まります。

昨今は労働関係法令が相次いで改正されていますが、法改正対応のための就業規則本則や各規程類の改定についても、早期に弁護士に依頼することで、改正法の施行前に余裕をもって実施することができます。

▼関連記事はこちら▼
従業員を解雇する際の注意点について!弁護士が解説-普通解雇・懲戒解雇について-

問題社員対応(モンスター社員対応)について弁護士に依頼するメリットとは?対応の流れを解説!

働き方改革・法改正対応を弁護士に依頼するメリットとは?対応の流れを解説!

4 弁護士に相談することで得られる具体的メリット

労働紛争の対応は、専門家ではない企業の総務・人事担当者にとって極めて大きな負担となります。その結果、本来の業務が滞り、「紛争対応」という本来業務とは乖離した業務に費やす時間が多くなります。

労働問題を多く取り扱う弁護士事務所との顧問契約の締結や訴訟・交渉の代理を依頼することで、特定の人事処分の法的リスクの把握、煩雑な法的手続き、書面作成、従業員対応との交渉などを自社で行う必要がなくなり、企業の総務・人事担当者や役員等が本来業務に集中することができますので、生産性の向上が期待できます。

また、弁護士が関与することで、各従業員からの様々な要求や主張に対し、法律に基づいた一貫性のある対応が可能になります。

感情論に流されることなく、法律に基づいた一貫性のある対応をすることで、他の従業員からの不信感を防ぎ、社内の規律を維持することができます。

さらに、日ごろから弁護士に相談することで、上記のような企業のレピュテーションリスクや莫大な経済的損失を被るリスクを低下することも期待できます。

5 当事務所のサポート内容

当事務所は、40年以上にわたり、労働問題を多く取り扱ってきているため、幅広い労働問題に対応することができます。

まず、予防法務的な観点からいえば、例えば、就業規則や各種規程類の作成・改定においては、最新の法改正、各ガイドライン、判例・裁判例等を踏まえて個々の企業が抱える法的リスクを洗い出し、リスクを最小化するための規定例をご提案いたします。

ハラスメント対策に関しては、外部のハラスメント相談窓口、社内のハラスメント研修、社内調査の代理等も実施していますので、各種の継続的・短期的なご支援が可能です。

未払い残業代請求対応に関しては、就業規則・賃金規程・36協定等の書面の作成・点検、労働時間管理に関するアドバイス、固定残業代の導入・見直しに関するアドバイス等により、紛争化するリスクを低下させるためのご支援をさせていただきます。

一方で、労働問題が発生してからの事後的なご相談についても、迅速に対応させていただきます。具体的には、労働審判や訴訟対応等の法的手続きへの対応、ユニオンとの団体交渉への対応、解雇、懲戒、降格、配転等の人事上の重要判断に関するアドバイス等をさせていただきます。

また、弊所と顧問契約をご締結いただければ、顧問弁護士として継続的にサポートさせていただくことで、企業の日常的な労務に関する疑問に迅速に対応し、予防法務の観点からアドバイスをさせていただくことが可能です。

以上の通り、労働問題は様々なリスクがあり、対応が遅れることでこれらのリスクは増大します。労働問題が発生した際や、その予兆が生じた際には、早期に当事務所に是非ご相談ください。

▼関連記事はこちら▼
会社側のハラスメント対応を弁護士に依頼するメリットとは?対応の流れを解説!

未払い賃金・残業代請求を弁護士に依頼するメリットとは?対応の流れを解説!

労働審判・あっせん対応を弁護士に依頼するメリットとは?対応の流れを解説!

団体交渉・労働組合対応(ユニオン)を弁護士に依頼するメリットとは?対応の流れを解説!

Last Updated on 2025年10月31日 by loi_wp_admin


この記事の執筆者:弁護士法人ロア・ユナイテッド法律事務所
当事務所では、「依頼者志向の理念」の下に、所員が一体となって「最良の法律サービス」をより早く、より経済的に、かつどこよりも感じ良く親切に提供することを目標に日々行動しております。「基本的人権(Liberty)の擁護、社会正義の実現という弁護士の基本的責務を忘れず、これを含む弁護士としての依頼者の正当な利益の迅速・適正かつ親切な実現という職責を遂行し(Operation)、その前提としての知性と新たな情報(Intelligence)を求める不断の努力を怠らず、LOIの基本理念である依頼者志向を追求する」 以上の理念の下、それを組織として、ご提供する事を肝に命じて、皆様の法律業務パートナーとして努めて行きたいと考えております。現在法曹界にも大きな変化が起こっておりますが、変化に負けない体制を作り、皆様のお役に立っていきたいと念じております。