労働安全衛生法違反とは?会社側が対応すべき内容について弁護士が解説!

労働安全衛生法違反とは?会社側が対応すべき内容について弁護士が解説!

文責:石居 茜

1 労働安全衛生法とは?

労働安全衛生法とは、労働基準法と相まって、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置等により、職場の労働者の安全と健康の確保、快適な職場環境の形成の促進を目的とする法律です。

2 事業主が対応すべき6つのポイント

労働安全衛生法について、事業主が対応すべきポイントは以下の6つです。

(1)統括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者

一定の規模・業種の事業場においては、統括安全衛生管理者、安全管理者を選任しなければならず、業種を問わず常時50人以上を使用する事業場においては、衛生管理者を選任し、安全又は技術的事項を管理させなければなりません。

(2)安全委員会、衛生委員会

一定の規模・業種の事業場においては、労働者の危険防止の基本対策、労働災害の原因・再発防止措置を審議する安全委員会の設置が義務付けられています。また、業種を問わず常時50人以上を使用する事業場においては、労働者の健康障害を防止するための基本対策、健康保持・増進を図るための基本対策、労働災害の原因・再発防止策を審議する衛生委員会の設置が義務付けられています。

(3)産業医

業種を問わず常時50人以上を使用する事業場ごとに、産業医を選任する必要があります。常時1000人以上を使用する事業場においては、専属の産業医の選任が必要となります。

(4)労働者の危険または健康障害の防止措置

事業主は、労働者の危険または健康障害を防止するための措置を取ることが求められています。

①機械・器具その他の設備、爆発性・発火性・引火性の物等および電気・熱その他のエネルギーによる危険、②掘削・採石・荷役・伐木等の業務における作業方法の危険、③墜落・土砂等の崩壊の危険を防止するための必要な措置を取ることが求められています(労働安全衛生法20条、21条)。

また、①原材料、ガス、蒸気、粉じん、酸素欠乏空気、病原体等、②放射線、高温、低温、超音波、騒音、振動、以上気圧等、③計器監視、精密工作等の作業、④排気、排液、残さい物による健康障害を防止するための必要な措置を取ることが求められています(労働安全衛生法22条)。

労働者を就業させる建設物その他の作業場について、通路、床面、階段等の保全並びに換気、採光、照明、保温、防湿、休養、避難及び清潔に必要な措置その他労働者の健康、風紀及び生命の保持のため必要な措置を講じなければなりません(労働安全衛生法23条)。

(5)機械等および危険物・有害物に関する法規制

労働安全衛生法は、事業主に危険な機械等や危険物・有害物の取扱いに関して様々な法規制をしています。

(6)安全教育等

事業主は、従業員に対し、雇入れ、作業内容の変更、一定の危険・有害業務への従事の際に安全衛生教育を行わなければならず、建設業、一定の製造業等一定の業種については、新たに職務に就くこととなった職長または労働者を直接指導監督する者に対する安全衛生教育を行わなければなりません(労働安全衛生法59条、60条)。

(7)健康の保持・増進の措置

事業主は、雇入れ時と年1回、従業員の健康診断を実施しなければなりません。

また、常時50人以上の労働者を使用する事業主は、ストレスチェックを毎年実施する必要があります。希望する労働者に対して医師の面接指導をする必要があります。

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3 労働安全衛生法違反の責任

労働安全衛生法違反は刑罰の定めがあり、刑事責任を問われる場合もあります。

  • 労働安全衛生法14条 作業主任者の選任義務違反 6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金
  • 労働安全衛生法20~25条 労働者に対する危険防止義務違反 6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金
  • 労働安全衛生法100条1項 労災の報告違反(労災隠し) 50万円以下の罰金

4 労働安全衛生法違反の送検事例・裁判例

例えば、労働安全衛生法21条の墜落防止措置については、労働安全衛生規則によって、高さが2メートル以上の箇所で作業を行なう場合において墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、足場を組み立てる等の方法により作業床を設ける、安全帯を使用させる、足場の材料・組立解体等について規制がされています。

労働者に対する危険防止義務違反は、6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金刑が定められており、死亡事故など重大な労働災害が発生し、労働安全衛生法違反がある場合は、労働基準監督署が検察庁に書類送検し、刑事責任が問われる場合があります。

刑事責任が問われた裁判例としては、例えば、以下の判決があります。

マンションの修繕工事現場において、架設されていた足場の解体工事を行う際、職長が足場の建枠に取り付けられていた下さんのロックピンの施錠確認を怠り、また、職長及び現場代理人が歩行者を一時通行止めにする等の措置を講じなかった過失により、作業中に下さん1本を地上に落下させ、歩行者に直撃させて死亡させた資材落下事故及び危険防止措置義務違反について、職長に禁固1年6か月、執行猶予4年、会社に罰金50万円が言い渡されました(東京地方裁判所令和元年5月21日判決)。

また、石油化学製造工場において爆発が起こり、作業員が死亡した事案について、製造課課長に禁固2年、執行猶予3年、会社に罰金50万円が言い渡されました(神戸地方裁判所平成30年7月19日判決)。

5 当事務所でサポートできること

当事務所では、労働問題に精通した弁護士が多数在籍しており、労働安全衛生法違反事案が起きたときに、事実関係の調査、労基署対応、刑事処分への対応、再発防止措置等の留意点についてアドバイスし、これら措置を講ずる手伝いをしたり、代理人となって活動することができます。

死亡や重度の後遺障害など、重大な労災事案が発生した場合等、本人や遺族からの損害賠償請求にも対応する必要がありますが、これらも代理人となって対応し、適正な解決に導きます。

また、過重労働、過労死やメンタルヘルス、ストレスチェックなどの対応、従業員の休職・復職をめぐる問題等についても、ご相談に乗り、措置を講ずることも可能です。

当事務所にご相談の上、早期に適切に対応することをお勧めいたします。

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Last Updated on 2024年8月29日 by loi_wp_admin


この記事の執筆者:弁護士法人ロア・ユナイテッド法律事務所
当事務所では、「依頼者志向の理念」の下に、所員が一体となって「最良の法律サービス」をより早く、より経済的に、かつどこよりも感じ良く親切に提供することを目標に日々行動しております。「基本的人権(Liberty)の擁護、社会正義の実現という弁護士の基本的責務を忘れず、これを含む弁護士としての依頼者の正当な利益の迅速・適正かつ親切な実現という職責を遂行し(Operation)、その前提としての知性と新たな情報(Intelligence)を求める不断の努力を怠らず、LOIの基本理念である依頼者志向を追求する」 以上の理念の下、それを組織として、ご提供する事を肝に命じて、皆様の法律業務パートナーとして努めて行きたいと考えております。現在法曹界にも大きな変化が起こっておりますが、変化に負けない体制を作り、皆様のお役に立っていきたいと念じております。