産業医による従業員の復職判定について弁護士が解説

文責:岩野 高明

◆復職可否判断の流れ

休職者が復職の申し出をしてきた場合には、会社は復職を認めるかどうかを判断することになりますが、その際に重要になるのが医師の診断です。復職を申し出る休職者は、通常、「復職は可能である」旨が記載された主治医の診断書を会社に提出しますが、この診断に疑義がある場合には、会社は別途産業医の診察を受けるよう休職者に指示することが可能と解されています。そのうえで、主治医・産業医双方の意見を踏まえつつ、最終的に復職の可否を会社が判断するという流れになります。

◆主治医の意見と産業医の意見の特徴

近年多くの紛争が発生しているのが、うつ病などの精神疾患による休職からの復職可否の問題です。

一般論としては、主治医は長期間にわたり定期的に患者を診察・治療していることから、主治医の診断は、患者の病状や回復の程度に関して相応の信用性があると評価される傾向にあります。しかしながら、主治医が患者の職場環境や担当業務に関して把握し得る情報は、当該患者からの一方的・片面的なものに限られるのが通常です。このため、主治医の意見は、勤務の実情が反映されない抽象的な就業可否に関するものになることもあります。

これに対し、産業医は、休職者の職場環境や担当業務について情報を得やすい一方、休職者を診察する機会が十分であるとはいえない場合があります。限られた診察の機会の中で、主治医以上に正確に休職者の病状を把握できるかといわれると、簡単にそうだということはできません。殊に、産業医が精神科医でない場合には、専門医である主治医の判断が重視されるべきだともいえそうです(このため、産業医が精神科医でない場合には、産業医とは別に精神科の会社指定医の意見を求めることも検討されるべきです)。

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◆産業医による医療情報共有の必要性

休職者の治療経過等に関する上記の情報の偏在を平準化する手段として、休職者の同意の下で、主治医から産業医へ、休職者のカルテ等の医療記録の写しを送付してもらうことが挙げられます。医療記録は要配慮個人情報に当たりますので、休職者本人の同意があることが前提です。開示された医療記録を産業医に見てもらい、復職可否判断の資料にしてもらうのです。医療記録の共有がされてはじめて、主治医と産業医の保有する情報量が対等になったと評価することができるでしょう。

◆リハビリ出勤等の結果の共有

上記のとおり、産業医は、会社から休職者の職場環境や担当業務について情報を得ることが可能ですが、会社が休職者に対して(復職可否判断の資料とするために)リハビリ勤務などを実施する場合には、この結果を参考にすることもできます。主治医が「復職可能」と診断したとしても、これに反するようなリハビリ勤務等の結果があれば、主治医の判断にも疑問が生じてくることになります。

◆まとめ

上記のような方策を講じることにより、産業医は、休職者の職場環境や担当業務に関する情報、主治医から開示された治療経過等に関する情報、及びリハビリ勤務等の結果等の全てを判断の材料とすることができることになります。

裁判例では、主治医の「復職可能」の判断について、「主治医は患者の治療を任務としており、患者の職場の実情には通じておらず、復職した場合に債務の本旨に従った労務提供が可能なのか、復職のため職場においていかなる配慮が必要なのかといった観点からの検討はしない立場にあり、復職可能との主治医の診断書の存在をもって就業可能との立証がされたとはいえない。したがって、原告が主治医から診療情報の提供を受けた産業医の意見を踏まえた復職審査を必要と判断したのは相当である」と判示したものがあります(協成事件・東京地判令和6年5月28日・労経速2528号24頁)。

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Last Updated on 2025年12月1日 by loi_wp_admin


この記事の執筆者:弁護士法人ロア・ユナイテッド法律事務所
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