従業員が業務中に機械でケガをし、労災認定された後に、代理人弁護士をつけて会社の安全配慮義務違反を主張して損害賠償請求したが、会社が安全配慮義務を尽くしていたことを主張・立証したところ請求が途絶えた事例

* 当事務所でよくあるご相談や取り扱い事例です。一部内容はアレンジしております。

【企業概要】

メーカー、製造業
従業員規模 30名程度

【事案の概要】

本件は、工場において、製品を機械で加工する業務に従事していた従業員が、機械に手を入れてケガをし、労災認定されました。その後、従業員が、代理人弁護士をつけて、会社の安全配慮義務違反を主張し、後遺障害による逸失利益を含めて1000万円程度の損害賠償を請求したという事案でした。

【当事務所の対応】

当事務所は会社の代理人となり、調査を開始したところ、機械には安全装置が取り付けられており、会社は、従業員に対し、日ごろから、機械の取り扱いや安全指導のマニュアルを作成し、研修などを行って、「運転中に機械に手を入れない」「手を入れる必要がある場合には、安全装置を作動させ、機械を停止してから行うこと」という指導を行い、工場のあちこちに危険に対する注意書きを貼付し、なおかつ、機械にも、大きな字でその旨注意書きがなされていました。

会社では、毎日、1日の作業を始める前に、従業員により安全装置の作動を確認し、作業に入ることになっていましたが、事故の起きた朝も、安全装置は作動することを確認し、機械に異常はないことを確認していました。

機械の作動中に手を入れることができるか検証をしてみたところ、機械の構造上、安全装置により手を入れることはできず、作動している機械に手を入れて手を切ることは非常に不自然であり、通常の作業工程ではあり得ないことがわかりました。

そのため、当事務所は、写真や動画で検証作業を説明し、上記の通り、会社は事故が起きないよう必要な安全配慮義務を尽くしていたこと、本件は、従業員が、会社の指導に反し、非常に不自然に機械に手を入れたために起きたものであり、従業員の過失によって引き起こされたものと言わざるを得ないと主張しました。

直接交渉、書面でのやり取りを数回行った後、相手方代理人からの請求は途絶えました。

【事案の解決のポイント】

労災事故も様々なケースがありますが、業務中にケガをし、業務起因性が認められると、労災認定がなされます。

労災認定がなされると、代理人弁護士をつけて、あるいは、ユニオン(外部の労働組合)等に加入し、会社の安全配慮義務違反を主張し、労災の補償を超える逸失利益や慰謝料などの損害賠償請求をすることがあります。

しかしながら、労災認定がなされたからといって、会社の安全配慮義務違反が認められるとは限りません。

従業員の方で、会社がどのような安全配慮義務を負っているのか主張・立証する必要がありますし、会社が、雇用契約上、従業員に対して負っている安全配慮義務の内容は、職務の性質や従業員の状態等の具体的状況に応じて判断すべきであり、会社は、会社の通常の業務・作業から通常予見できないような事故まで回避すべき義務を負っているとはいえません。

会社が、予測される危険に対し、必要な安全配慮義務を尽くしていると主張することができる場合もあります。

従業員が業務中の事故により労災認定され、代理人弁護士をつける等して損害賠償を請求した場合には、法的な主張や裁判例をきちんと踏まえて対応する必要があり、初期対応を誤ると裁判で不利になるケースもあります。

そのため、自分たちで回答する前に、当事務所のような労働問題に精通し、こういったケースを多数経験している弁護士に相談の上、対応に臨むようにしてください。

また、損害賠償が一定程度認められることもあるため、労災上乗せの保険等に加入しておくことも重要となります。

当事務所では、労災の具体的な事案の代理人対応はもちろん、予防法務や研修等の対応も可能ですので、労災に関するご相談は、当事務所にご相談ください。

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Last Updated on 2024年5月29日 by loi_wp_admin


この記事の執筆者:弁護士法人ロア・ユナイテッド法律事務所
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