就業規則の作成・チェックを弁護士に依頼するメリットとは?対応の流れを解説!

1 お悩み事例

 当社にて就業規則を整備したいと思いますが、何から始めればよいのか分かりません。

 経費もかけられないですし、インターネットで探してみると様々な就業規則のひな形を見つけることができます。自分で見つけて気に入ったものをそのまま使っても大丈夫でしょうか。

 社労士や弁護士に頼む方法もあるようですが、多くの費用はかけられません。専門家に就業規則の整備を依頼すると一体どのようなメリットがあるのでしょうか。

 

2 回答

 一般に公開されているひな形をそのまま使うことはお勧めしません。会社の実態に合わないものになりますし、会社が必要とする以上に労働者側に有利な内容になっているものもあり、会社に不要な規定や、損失を被る可能性のある規定もあります。

 当事務所は、42年以上にわたり労働問題を扱っており、過去のトラブルは、就業規則をどのように規定していれば防げたのか?という点につきたくさんの事例を把握しております。ご依頼いただければ、会社の実態に即した必要十分な事項を記載した就業規則をご提案致します。まずは一度ご相談下さい。

 

3 就業規則にはどのような役割があるか。

(1)就業規則とは?

 就業規則は、労働者の賃金や労働時間などの労働条件に関することや、職場内の規律などについて定めた職場における規則です。職場でのルールを定め、労使双方がそれを守ることで労働者が安心して働くことができ、労使間の無用のトラブルを防ぐことができるので、就業規則の役割は非常に重要です。

 就業規則は、従業員との労働条件を統一的・画一的に定めるものです。定めている内容は従業員との労働契約の内容になります。

 就業規則は会社と従業員の約束事・契約です。徹底的に整備することで、また、実態にあったものを作ることで、いざ労使トラブルになった際には、会社を守る盾になります。

 労働法の世界は、法改正が頻繁に行われ、労使間のルールの基準となる裁判例も続出しています。絶えず見直しを行わなければ、労使トラブルを回避する盾にはなりません。

 

 労使トラブルの実務は、就業規則の細かい一つの文言で大きく解釈が違ってくることも少なくありません。

 会社の労務の実態や業務内容に応じた就業規則の作成が不可欠です。そもそも就業規則が存在しない、定型の雛形そのまま使っている、会社に置いてあるだけで、見たことも使ったこともない、専門家に就業規則を作ってもらったが、内容をよく把握していない、存在はするものの、何十年も前のもので長年チェックしていない・・・というような場合には、今すぐ就業規則を確認する必要があります。

(2)就業規則に記載すべき事項

 就業規則に記載する内容には、必ず記載しなければならない事項(絶対的必 要記載事項)と、当該事業場で定めをする場合に記載しなければならない事項 (相対的必要記載事項)があります(労働基準法第89条)。

 絶対的必要記載事項 には、① 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇 並びに交替制の場合には就業時転換に関する事項 ② 賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項 ③ 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)があります。

 相対的必要記載事項としては、 ① 退職手当に関する事項 ② 臨時の賃金(賞与)、最低賃金額に関する事項 ③ 食費、作業用品などの負担に関する事項 ④ 安全衛生に関する事項 ⑤ 職業訓練に関する事項 ⑥ 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項 ⑦ 表彰、制裁に関する事項 ⑧ その他全労働者に適用される事項があります。

 このように法律に定められていますが、各社の実態に即した、また、過去自社や他社で発生したトラブルを踏まえ、実態に即した、必要かつ十分な内容の就業規則を具体的に整備する必要があります。

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(3)就業規則の効力

 就業規則は、法令や労働協約に反してはなりません(労働基準法第92条)。 就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効となります(労働基準法第93条、労働契約法第12条)。 そして、無効となった部分は、就業規則で定める基準が適用されます。

 

4 就業規則を作成・変更するには?

(1)就業規則の作成義務

 常時10人以上の労働者を使用している事業場では、就業規則を作成し、過半数組合または労働者の過半数代表者からの意見書を添付し、所轄労働基準監督署に届け出する必要があります(労働基準法第89条、第90条)。また、就業規則を変更した場合においても同様です。

 時としては10人未満になることはあっても、常態として10人以上の労働者を使用している場合も当てはまります。なお、労働者の中には、パートタイム労働者やアルバイトなども含まれます。

 就業規則は、各作業所の見やすい場所への掲示、備え付け、書面の交付など によって労働者に周知しなければなりません(労働基準法第106条)。

 周知方法としては、 ① 常時各作業場の見やすい場所に掲示する、または備え付ける 、② 書面で労働者に交付する、 ③ 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働 者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置するなどの方法があります。

(2)就業規則の変更

 就業規則の内容を変更する場合には、会社は労働基準法に定められている所定の手続を行う必要があります(労働基準法第90条)。

 具体的には、就業規則の変更は、変更後の就業規則について、従業員の過半数代表者から意見を聴取し、その意見書を添付して、所轄の労働基準監督署に届け出ることによって行います。

 このとき、仮に従業員の過半数代表者から、就業規則の変更について仮に、「反対」や「異議あり」の意見があったとしても、手続を進めることができます。

(3)就業規則の不利益変更

 就業規則に記載されている労働条件を、従業員にとって不利な内容に変更することを「就業規則(労働条件)の不利益変更」といいます。適切な対応をしておかないと、その変更が法的に無効なもの(変更の効力が認められないもの)と扱われるおそれがあります。

 不利益変更とは具体的に、①従業員の賃金を減額する(支給している手当を減額・廃止するなど)、②退職金を減額する、③現在の労働時間を延ばす、休憩時間を短くする、④所定休日数を減らす、⑤特別に与えていた休暇などを無くす、⑥その他、自由にできていたことなどに条件を付けることなどが考えられます。そして、会社が就業規則を変更する際には、「不利益変更に該当しないか」、「不利益変更に該当する場合には、手続などが法的に問題ないか」という点に十分配慮して対応する必要があります。

 

 労働条件の不利益変更は、労働契約の内容を変更するものである以上、労働者との個別の合意によって行うことができます(労働契約法8条)。これは、従業員一人と会社との間で合意することを指しています。

 そして、使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできないのが原則です(労働契約法9条)。もっとも、不利益に変更する場合であっても、変更後の就業規則を周知させ、かつ、諸要素に照らして当該変更が合理的なものであるときは、労働者の合意を得ずに就業規則を変更することにより労働条件を変更することが認められています(労働契約法10条)。

 そして、この合理性を判断するにあたっては、①労働者の受ける不利益の程度②労働条件の変更の必要性③変更後の就業規則の内容の相当性④労働組合等との交渉の状況⑤その他の就業規則の変更に係る事情という要素を総合的に考慮することになります。

 合理性が認められやすいようにするために、労働者の受ける不利益の程度に応じ、経過措置や代替措置等によって不利益の程度を緩和する措置(激変緩和措置)を取るとともに、可能な限り、労働者への説明や協議を重ね、十分に理解、納得してもらったうえで変更することが望ましいです。

 

5 就業規則のひな形をそのまま使うことのリスク

 厚生労働省は、「モデル就業規則」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/model/index.html)を開示しており、その内容は法令に従った充実したものとなっています。

 もっとも、これをそのまま使うことには大きな問題があります。この内容は、一般的なものとなっていますので、企業規模や業務内容、実際の労務実態に合わない箇所があるはずで、現実に発生したトラブルには対応できない可能性があります。

 また、官公署から公表されている就業規則は、法に則って作成されているので、違法となる可能性は低いですが、労働者側の権利を守る立場に立って作成されていることも多く、本来であれば明記する必要のない労働者側の有利になり、使用者にとって不利になる条文が多数盛り込まれていることもあります。

 したがって、就業規則のひな形をそのまま使うことにリスクは大きいといえます。

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6 就業規則に関するよくあるご質問

就業規則の整備に関し、当事務所では、下記のようなお悩みをよく伺います。

① 退職金規程はどのように定めればよいか?
② 出向規程はどのように定めればよいか?
③ 固定残業代を正しく運用するためにはどのように定めればよいか?
④ メンタル疾患を抱える従業員に対する対応につきどう定めればよいか?
   ・休職を繰り返す者を休職させることができるか?
   ・診断書に疑義がある場合、会社指定医の受診を命じられるか?
⑤ SNSへの対策はどうしたらよいか?
⑥ 慶弔休暇の濫用防止のための文言はどのように定めればよいか?
⑦ 行方不明者への対応は現在の規定でできるのか?
⑧ 問題社員への処分を適切に行うためにはどのように定めればよいか?
⑨ テレワーク規程の内容は?
⑩ 不利益変更における留意点は?

 

当事務所に就業規則の整備をご相談いただける場合

上記①~⑩に関して、当事務所では以下の観点に注意して規定を作成していきます。

 

① 退職金規程はどのように定めればよいか?

→退職後、支給日までの間において在職中の行為につき懲戒解雇に相当する事由が発見された者の扱いをどうするかという点も踏まえて規定する必要があります。

 

② 出向規程はどのように定めればよいか?

→単なる『出向命令』を定めた規定だけではなく、出向規程等を別に作成して、出向の諸条件等について従業員に対して明示するべきです。

 

③ 固定残業代を正しく運用するためにはどのように定めればよいか?

→A 法定の割増賃金との差額分を支払う旨を記載し、実際に支払うようにすること
 B 支給時には、時間外労働等の時間数と手当の額を明示すること
 C 営業手当・作業手当・運行手当等を固定残業代分とするためには、その理由を示すこと

という点を踏まえて規定する必要があります。

 

④ メンタル疾患を抱える従業員に対する対応につきどう定めればよいか?

   ・休職を繰り返す者を休職させることができるか?
   ・診断書に疑義がある場合、会社指定医の受診を命じられるか?

→ 一定期間内に欠勤又は遅刻・早退を繰り返す場合には、休職を命令することができる旨の条項を定めることが必要です。

 「相当期間の療養を要すると認められるとき」とする規定もよくみかけますが、相当期間とはどの程度なのかという紛争化のリスクは残ります。

 

また、

A 通算できる期間はある程度長くすること(6カ月程度)
B 通算できる疾病は、同一だけでなく類似の症状も含めること
  (休職の理由となった疾病の理由に関係なく通算する方法も可能)
C 復帰後の欠勤日数(不就労期間)も通算の日数から休職期間から控除できる内容にすること

が必要となります。

 

さらに、会社にとって必要な場面で、会社指定医の受診命令を発することができるという明確規定しておくことも有用です。

 

⑤ SNSへの対策は?

→SNS利用に関する詳細な規定を設けることが有用です。

 「SNSは適切に利用する」程度では全く足りません。

 

⑥ 慶弔休暇の濫用防止のための文言はどのように定めればよいか?

→A いつまで取得することができるのか期間の制限を設けること
 B 休日と重複した場合にはどう扱うのか明確にすること
 C 連続取得限定であるのか、分割取得可能なのか明記すること
 D 届出制ではなく、許可制度にすること

が有用です。

 

⑦ 行方不明者への対応はできているか?

→A 行方不明の従業員については、解雇ではなく、退職扱いとすること
 B 連絡がつかない期間については、1か月程度が妥当

という観点から整備する必要があります。

 

⑧ 問題社員への処分を適切に行うためにはどのように定めればよいか?

→A 処分を柔軟に行うため、懲戒処分の種類を増やすこと(最低6種類)
 B 処罰にあたると企業が考える行為を網羅すること(最低30項目)
 C 手続に関する条項(弁明の機会の付与、自宅待機命令、懲戒の公示など)

について明記することが必要となります。

 

⑨ テレワーク規程の内容は?

→A 労働時間の管理・把握
 B 費用負担・システム構築
 C 長時間労働対策
 D メンタル対策
 E ハラスメント対策

という点に着目したテレワーク規程を作成する必要があります。

 

⑩ 不利益変更における留意点は?

→就業規則の不利益変更をする際には、

A 全面的な変更をする場合には、従業員説明会を開催すること
B 従業員説明会においては、出来る限り同意書を取得すること
C 賃金・退職金の制度変更は、不利益の程度等を充分に説明すること
D 賃金の大幅な減額を伴う場合には、必ず経過措置等を設けること 

という点に留意することが必要です。

 

7 就業規則の作成・変更を弁護士に依頼するメリット

 上記「6.」にてご案内したとおり、それぞれの規定は、どのような点に着目して制定すべきか、また、会社の実態に合わせて、どこをどのようにすれば、紛争を回避できるのか、当事務所にご依頼いただければ、判例、長年の紛争解決経験、そして法改正を踏まえご提案することが可能です。

 就業規則に不備が一つ見つかっただけで、訴訟において、何百万円もの残業代請求が認められ、さらにその事実が他の従業員にもそれが伝わり、次々と残業代請求がなされ、倒産の危機に陥ったり、問題社員を解雇することができず、事実上定年まで雇用し続けなければならなくなって何千万、何億円の損失が発生する可能性があります。

 上記「5.」で示した問題についても、長年労働問題を扱ってきた当事務所ならではの工夫をこらした条項をご提案できます。

 ぜひ、当事務所にご相談ください。

Last Updated on 2024年4月17日 by loi_wp_admin


この記事の執筆者:弁護士法人ロア・ユナイテッド法律事務所
当事務所では、「依頼者志向の理念」の下に、所員が一体となって「最良の法律サービス」をより早く、より経済的に、かつどこよりも感じ良く親切に提供することを目標に日々行動しております。「基本的人権(Liberty)の擁護、社会正義の実現という弁護士の基本的責務を忘れず、これを含む弁護士としての依頼者の正当な利益の迅速・適正かつ親切な実現という職責を遂行し(Operation)、その前提としての知性と新たな情報(Intelligence)を求める不断の努力を怠らず、LOIの基本理念である依頼者志向を追求する」 以上の理念の下、それを組織として、ご提供する事を肝に命じて、皆様の法律業務パートナーとして努めて行きたいと考えております。現在法曹界にも大きな変化が起こっておりますが、変化に負けない体制を作り、皆様のお役に立っていきたいと念じております。

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